現代版でのパラレルなお話です。
一応大まかな設定。

リッド 19歳 大学生かフリーター
ファラ&キール 18歳 高校3年 受験生(ぉ
メルディ 17歳 高校2年

ということで、少しでもお楽しみ頂けたら幸いです。



Take.1  悩める者

 バレンタイン。
お菓子屋の策謀によって生まれた、チョコレートの交換日。
元々の意味は無実の罪で処刑されたバレンタインという名の神父を祭ることから始まった行事であり、男女関係なく大切な人に花、特にその象徴とされるバラを贈っていたというのが正しいものだという。
「……ということらしいんだが、花を贈ったほうがいいのだろうか、リッド」
ごくごく真面目な表情で問い掛けてきた幼馴染に、リッドはげんなりとした表情で溜息をついた。
 話の半分も聞いてなかったが……
「3月にお返しをしようって日があるんだ。いちいち自分の首絞めるようなことなんざしたくねえよ……」
「それもそうか」
 あっさりと頷いて、彼――キールは開いていた分厚い辞書を閉じた。
 毎年腐るほどチョコをもらっていたのにキールがバレンタインに興味を持ったのは今年が初めてである。
理由は簡単、半年ぐらい前から付き合い始めたメルディのせいだ。おかげで、どうやらこういうことに興味を持って調べてきたらしい。
なんでもかんでも興味を持ったものに関して調べようとする意欲は認めないでもないが。
(なんでオレが付き合わされてんだよ……まったく受験生のクセにのんきなもんだよなぁ。勉強するものが違うっての……)
ひとしきり心の中で愚痴をこぼして、実際には大きな溜息を盛大に吐き出した。


 

Take.2  どっちがどっち?

「ねえねえ、バレンタインにみんなでどこかに遊びに行かない?」
たまたま4人――リッド、キール、ファラ、メルディ――がそろった日曜日のこと。突然ファラがそんなことを言い出した。
「ワイール! みんなでお出かけするか!」
 はしゃいだ声を上げたメルディに、うん! と大きく頷いてファラは満面の笑みを浮かべる。
「そう、みんなでいったら楽しいよねー♪」
「はいな!」
「……おい、待てよ」
放っておけばどんどん勝手に話を進めてしまいそうな小鳥のさえずりに、すとんと石が落とされた。
 2人が振り返った先にいるのは、空色の瞳をやや細めているリッドの顔。
「おまえら受験生だろーが。んな余裕あるのかよ」
「いいじゃないこれくらい。息抜き息抜き」
あくまでもお気楽に何にも問題はないと言うように、ファラは手をひらひらとさせた。
 長年の付き合いから、どうあっても考えを変えそうにないことを悟って溜息をつくと、リッドはもう1人の受験生の方へと首を回した。
「キール」
 いいのか? と尋ねると言うよりは、おまえからも何とかいえよという含みが多分に存在する声。
「え、あ、ああ。そうだな……」
 突然声をかけられたキールは、参考書から慌てて目を上げて返事をして。
ほとんどリッドの言葉の勢いに飲まれたように言葉を続けようとした時、不意に服の裾を引っ張られた。
「なに、を……っ」
その秀麗な眉を顰めくるりとその方向に目を落とすと、瞳を潤ませたメルディの顔。
「だめか? キール……」
今にも泣き出しそうな表情で見上げられて。一瞬後
「まぁ、受験勉強といっても、ここまで来たら今更だしな。一日ぐらいいいんじゃないか?」
 あっさりリッドを裏切った。
「お・ま・え・ら・なぁ、ちったあ受験生としての……」
「ワイール! ありがとな、キール!」
「うわぁ、だから急に抱きつくなっ! それに『な』は余計だっていつも言ってるだろ!!」
 拳を震わせてうめくリッドの前で繰り広げられる、周囲を全く無視した二人の世界。
「どうにかしてくれ……」
 本気で泣きたい心境で、がっくりと肩を落とし頭を抱え込む。
すっかり沈んでしまったリッドの肩を、ファラはポンポンと軽く叩いた。
「まあまあリッド。みんなこう言ってるんだし、大丈夫イケるイケる!」
「あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
お気楽思考のファラ。一見ちゃんと考えてそうで、メルディに簡単に振り回されるキール。
(なんでこいつらはいつもいつもっ……!)
暫らくがしがしと頭を掻き回して、半ばやけくそで叫んだ。
「いいか! あとになってこのせいで落ちたとかって言うのはなしだぞ!? おばさんに怒られるのは絶っっ対に勘弁だからな!!」




Take.3  量と質とその形

で、当日。
 4人で映画を見たり買い物に付き合ったりと、ゆっくりと過ごした。
ファラやキールにとっては、久し振りのゆっくりとした休みだったこともあり、特にファラは笑顔が絶えることがなかった。
 最近は疲れた顔を見ることが多かったこともあり、そういう意味では本当にいい息抜きになったのかもしれない。
ファラの笑顔を見ながら、そう思ってリッドは穏やかな表情で目を細めた。

  さて、肝心なチョコレートはというと……

「義理チョコみたいだな、それ」
リッドが渡されたチョコレートを見て、キールがぼそっと呟いた。
リッドが手にしてるのは、大きな袋に入れられたたくさんの小さなチョコレート。
確かに、義理チョコを寄せ集めて一つの袋にまとめたらこんな感じなのかもしれない。
 しかしそんなことを言われて気分がいいはずもなく、瞳に剣呑な光を宿らせてリッドも言い返した。
「なんだよ、大きさだったらおまえの方が小せえだろうが」
 そういわれたキールが手に持っているのは、奇麗に包装された手のひらサイズの箱。
確かに量はリッドのものより明らかに劣る。
 リッドと同様、不機嫌そうな半眼を向けながら、キールも負けじといい返した。
「どっかの大食らいと違って、ぼくは量より質だからな」
「どーいう意味だよそれは」
「文字通りの意味だ。量を食べることしか気にしないようなヤツだから、想い云々以前に量を作ることが第一優先になってしまいそうだからな」
「じゃあなんだ? 気持がこもってないとでもいいたいか?」
「誰もそこまでは言ってないさ。しかしファラも大変だな。味もわからないくせに量だけは異常なまでに食うやつで」
「じゃあメルディも大変だなぁ。自分ではなにもしないくせに口でいちいち文句だけは言うやつで!」
青筋が立ったのはどっちが先か。何時の間にか二人の間に火花が散っている。
 


「なぁなぁファラ……キールたち止めなくていか?」
なんだか入るに入ることも出来なくて、メルディは不安そうに傍らのファラを見上げた。
「大丈夫だよ。二人とも本気でケンカしてる訳じゃないんだから」
「でもぉ……」
それでもなお心配そうに二人に目をやるメルディに、ファラはにっこりと笑いかける。
「へーキ、へーキ。いざとなったら私の殺劇舞荒拳で止めるから」
「は、はいな……」
 ある意味さっきよりも少しだけ青ざめながら、メルディはこくこくと頷いた。

 

まあ、拳で語り合うのも、1つの愛の形でしょう……きっと






※注意
・Take.1の冒頭の薀蓄は私のうろ覚えなので、間違っている可能性が高いです。
と言うよりまとめるのが面倒で端折った部分もかなりあるので絶対間違ってます。(直せよ)
・普通の受験生はここまで気楽にはしていません。
(私の友人で「チョコ作りぐらい息抜きだからいいの」と言う人はいましたが。)
・キャラクターのイメージを崩した自覚はしっかりとあります。ショックを受けた方申し訳ありません。

後書き:
 ということで、苦し紛れに小ネタをちょこちょこ出していくという何だか邪道な物になってしまいました(滝汗)
しかも微妙に繋がってるし;; 基本的にはリッドの視点です。なのでややリドファよりかも。
  最初はTake.3しかネタが浮かんでなくて、ここまでもって来るのにどうやって1つの話にしようかと、
Take.1・Take.2と思いつくままに打ってたのですが、上手くつなげられず結局こんな形になってしまいました。
楽しみにしてた方(いるのか?)本当に申し訳ありません。所詮私は甘い話もまともな話も書けない女です……(遠い目)
 おばかな話なら本当に早いよね……自分……(泣)

2002.2.15 UP 
最終更新日 2002.2.17 蒼流

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