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3 じれったい奴等め

「スティーブとモニカ、付き合い始めてたのね」
「そうだったのか?」
「え? スティーブはヴェイグのおかげだって言ってたけど……」
 違うの? と小首を傾げて尋ねるクレアに、ヴェイグは微かに眉を寄せて「知らなかった」と呟く。
「確かに何度か心配しているのを聞いて伝えることはあったが……」
 心底不思議そうに言うヴェイグに、クレアは思わず吹き出して。
「もう、ずいぶん色んなことがあって変わったと思ったけど……やっぱりこういうことは、ちっとも変わってないわね」
「……似たようなことをスティーブも言われた」
「そうなの」
 笑いすぎて目尻に僅かに溜まった涙を指でぬぐいながら、「でも」とクレアは続ける。
「よかったわ。あの二人のこと、ずっと気になってたから」
「相談でも受けてたのか?」
「ううん、そういうわけじゃないけど……やっぱり見ててもどかしかったもの」
「そう……なのか」
 気付けなかったことに複雑な気持ちになったのか、考え込むヴェイグを見て。クレアは再びくすりと笑った。
「うん。でもこの調子じゃ、今度は私の方が言われそうね」
「?」



「ヴェイグさん、全然気付いてないですね」
「しょうがないんじゃない? なんせヴェイグだし」
 アニーが苦笑をすれば、その隣でマオが頭の後ろで腕を組んで答える。もう随分と見慣れたやり取りだ。そう見慣れてもきた……が。
「でもやっぱ、じれったいネ」
 あとどれだけこれが続くんだろ、とため息交じりで頭を掻くマオの頭上で低い笑いが響く。
「……だが、当人達が満足であるなら、それもよかろう」
「そうですね。『これから』はまだまだあるんですから」
 穏やかな表情でつぶやいたユージーンに、アニーも応じて笑顔で目を細めた。

 たとえ周りが「じれったい奴等」とやきもきをしても。間違いなくその状態は、彼らにとっての幸せの形に違いない。




辛いこともあった分だけ、ゆっくりとでも幸せになって欲しいなぁと。

2005.5.6 初出  【出雲奏司】
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