WhiteDay sketch

Valentine sketch 番外?



「大したものはできないけど、食べたいものがあればリクエストして。希望があれば何でも作るから」
「え、本当ですか!? ありがとうございますーv」
 ホワイトデーだしねと交わした笑みに、花もニコニコと人指し指を立てた。
「七瀬さんからもこの間クマのぬいぐるみ付きのあめちゃんもらったです♪」
 そういえば各務からも(バイト先の見切り品だとはいっていたが)よくおまけでついてる可愛いストラップのセットをもらったと思い出しつつ、花はぷっと吹き出す。きっとパパも、今頃ママや担当さんにもどたばたしつつ渡してるのだろうと目に浮かんだからだ。
「……瑞貴からは?」
「まさかー! 瑞貴がお返しなんて殊勝なこと考えたりなんてしないですよー」
てゆーか、あげたうちに入らない気もしますし。そう言って、手をひらひらさせけらけらと花は笑う。
 元々あげようというつもりすらなく、けがの功名(?)であげたようなものだし――とまでは言わなかったが。むしろ渡した事情も事情なので、お返しがなくて花としてはちょっとほっとしたりしていたのだ。
 そんな苦笑しつつの花の言葉になにを思ったか。灰人は「そう」と小さく笑って。
「……そういえば、春休みの予定は?」
 なにかあるの? と聞かれて。
 唐突な言葉に目を瞬きつつも、花は思い出すように宙に目をさまよわせる。とはいえ、高校の春休みなど出される宿題の量の割りにそれほど長くはない。そう長くはかからず「そーですね……」と花は口を開いた。
「今のところ特にないです。友達もバイト三昧だったり、海外にいるお母さんのところに行くとか言ってましたし……」
 言いながら、花の目がかすかに遠くへ向けられる。
(そういえば、あたしも正月以来パパやママに会ってないよね……)
 よく電話をしたり、手紙を書くこともあるが。家を飛び出す直前まで落ち込んでいた状態でいたから、今さらながら心配かけてるんじゃないのかと、花は思い至り小さく吐息する。
「実家に帰りたい?」
「あ、いえ! ここにいるのがヤとかじゃなくてですねッ」
「分かってる」
落ち着いてと灰人が声をかければ、照れたように花は笑って。
「そーですね、久しぶりに会いたいかもです……でも、そうするにはちょーっとお小遣いがピンチで」
 たははと花は笑う。特にバイトをしているでもなく、そう度々帰れるほど花に金銭的な余裕はない。特に無駄遣いしてるわけではないが、ここから花の実家まで決して近いとはいえない距離だ。学生には交通費も馬鹿にならない。一応、瑞貴から渡されてる金もあるが、そもそも借金始まりな相手の、しかも他人のお金を勝手に使うのは気が引ける。
 「そうか……」と灰人は察したように軽く相槌を打って。ふと灰人は一瞬あらぬ方向へ顔を向け目を細めると、ぽんぽんと花の頭をなでた。
「じゃあ、早めに宿題片付けるといい」
 このタオル、洗濯機の中入れておいてと、花は灰人に何気ない風にトンと背を押されて。
「? へ? あ、はい??」
 どっちにどう答えたものか。分からないまま追い立てるように渡された洗濯物を抱えて、頭に疑問符をくっつけたまま花は部屋の奥、洗面所へと向かう。
 その背が見えなくなるまで見送ってから、灰人は口を開いた。
「……だ、そうだ」
 いるんだろと灰人が部屋のドアの方へと声をかけると、不機嫌さを隠そうともしない表情の瑞貴が、音もなく部屋の中へと入った。
「……なにが」
「きいてたんだろ? 本気で忘れてたのか迷ってたのか知らないが、返す気があるならうってつけだろう」
 毎年、学校でもらってきていた分にはきっちりお返しをしていた人間だ。忘れていたなどといううっかりというよりは後者だろうと見当をつける。妙な照れで恥ずかしがっているのか、ただ捻くれて意地を張っているだけか。
「……余計な世話だ」
 ふてくされたようにそっぽを向いたが否定はしなかった瑞貴に、月末の予定は決まったかと灰人は小さく笑みを浮かべた。

-End-

comment

*合宿後に「好きなとこつれってやる」と言ったのが、実はホワイトデー代わり説(ぉ
なんとなくこの時間軸なにがあったっけと思ったらこれがあるじゃないかと。そういえば、瑞貴がこんな気の利いたようなお出かけ、自分から理由なく提案するのって不自然じゃね? と<どこまでひどいイメージ持ってますか

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2008/03/15 初出 [ 出雲奏司 ]

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