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1,真っ向勝負

この上もなくほのぼのとした風景なのですが……
「ははうえー」
 小さな男の子が、ぱたぱたと目をかがやかせてかけよるのを、『ははうえ』はこしをかがめてうけとめようとして。でもいつもとちがって、そのままほっぺたやくちに寄せられた男の子のぷくぷくとやわらかい唇に、おどろきながらもくすぐったそうにくすくすと笑いました。
「急にどうしたの?」
 『ははうえ』が聞くと、男の子は「あのねあのね」と気がせくようにぎゅっとだきつきました。
「ボクおおきくなったらははうえとケッコンするの!」
「あら、ホント?」
「ははうえ、うれしい?」
 ちょこんとかわいらしく首をかたむけてきいた男の子に、『ははうえ』はかがやくような笑顔をうかべてうなずきます。
「もちろん! ありがとー」
 かわいくてならないと言うように、『ははうえ』は男の子をほおずりするように抱きしめて。
「でも父上とはナイショで約束ね」
と、口の前で人差し指を一本立てて「シー、ね?」といいました。でもそのことばに、男の子はふしぎそうに目をまたたいて首をよこにふります。
「あのね『リャクダツアイ』だから、せーせーどーど−ちちうえとショウブするんだよって、ななせのおじさんがいってたの」
「……へ?」
 そのことばに、『ははうえ』がめをまるくして。男の子はとてもしんけんな表情で、つづけます。
「だからちちうえ! ボクおおきくなったらははうえとケッコンするからね!!」
 びしっと、いつの間にそこにいたのか『ははうえ』の気づかないところで立っていた『ちちうえ』に男の子はゆびをつきつけました。小さいながらもせいいっぱい『ビシッ』と宣戦布告をしてきた男の子に、『ちちうえ』はこたえます。
「ほぅ。そうかそうか。じゃあ、頑張って早く大きくならないとな」
『ちちうえ』は男の子に笑いかけながら、その頭を上からぽんぽんとたたいて。ライバルとはいえやっぱり『ちちうえ』も大好きな男の子は「うん!!」と笑顔でおおきくうなずきます。
 それは会話とやり取りだけを聞いていれば、とてもとても微笑ましいものでしたが――

 その時『ははうえ』が顔色悪くしていることに気づいているのは、『ちちうえ』と偶然それを見ていた『ななせのおじさん』で。『ちちうえ』が浮かべている笑顔は見る人が見れば、明らかに目が笑っていない――どころか怒っているものでした。(それも、相当に)
 それに気づいていた『ははうえ』は、あとで自分が受けるだろう被害を思って袖を濡らしたとか。
 自分の予想通りに行き過ぎた『ななせのおじさん』が苦笑交じりに『ははうえ』に謝ったあと、楽しそうに笑ったりしていたというのは、またべつのおはなしです。

 そうそう。
 素直に育った男の子が『ちちうえ』の表情を『きちんと』読み取れるようになるまで『ははうえ』へのプロポーズと『ちちうえ』への宣戦布告は続いたということです。


おしまい。(むしろ終われ)

*ほら子供って素直ですし。多分「母上と結婚する」って言うのも一度や二度じゃないと思うのですよ。親子とはいえ『ちちうえ』のあの外面読み取れるまでにもそれなりに時間もかかるだろうと予測。
そして、その度にやたら心の狭いわりに面の皮はぶ厚い『ちちうえ』ですから、子供に直接ぶつけられない分だけ、シワ寄せ全て『ははうえ』に向かうんでないかと。<なんかすでに作中で身に染みてるような反応してますが気にしない方向で<なにやったんだ『ちちうえ』……
 因みに『ななせおじさん』は『おにーさん』と呼ばせようとしてますが、徹底した『ちちうえ』の指導によりもっぱら『おじさん』で呼ばれてるとかどうでもいい設定。

2007.12.16 初出  【出雲奏司】

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