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04.微睡む


 左肩の辺りが温かい。
 そう感じて、名を読んで返事がないのを確認したのは少し前。それからズリズリとかかる重みや触れる面積が増えてしまったのも、そのまま放置している限りは必然だったのだ。我ながら甘いとは思ったが、それは今更ともいえることだから、心境としては諦めに近い。
 そう耳元近いところで聞こえてくる寝息に、起こす気になれなかったのだから、しかたないのだ。
 ただ――
 手にしている本がひざから滑り落ちそうになり、あわてて握りなおす。ふっと意識がかすみ遠のきそうになるのを、頭を振って何とか払う。
 実は先ほどからこれの繰り返しだった。隣に在る人肌の温かさのせいか、それとも眠りに伝播する成分でもあるのか。波のように寄せてくる眠気に幾度も微睡みかけては引き返している。別に自宅でもあるし、普通に考えればどうということもなく、そのまま眠ろうが問題はない。……はずなのだが。
 自由になる右手を額に置き、眠った後を考える。
 灰人に見つかれば何も言わないだろうが、無言ゆえの視線の圧迫を感じ取ってしまうのは必至だろう。運悪く七瀬に見つかったら最後、撮影会にからかいに下手すれば碌でもない連絡網で回されかねない。
 そして何より。
 花が目を覚ました時、この体勢に気づくや否や、たとえそれが彼女自身の不注意(?)の所為であろうが、容赦なく手足が飛んでくるだろうことはほぼ間違いない事実で。たとえそれが反射だとか照れ隠しだといった理由だとわかっていたところで、睡眠中にもらいたいものでは絶対にない。
 瑞貴は深々とため息をついて、どうしたものかととことん無防備で無邪気なその寝顔を眺める。これを起こせば今なら被害は多くても一つで済む。事前に分かっていれば、そう易々と飛んでくる手足を食らうこともないから、ほぼ0と言ってもいい。
 そこまで分かっていながらも、瑞貴はじっとその寝顔を眼にしたまま考えて、再度深く深くため息をつく。
 気持ちよさそうな寝顔がいっそ憎らしいだけならいいのにと思う。起こせるものならとうの昔に起こしていた。どんなに不平だの不満をならべても、最善策を検討しても。出してしまう答えはいつだって同じもの。
 小さいころから変わらないこの寝顔にさえ、勝てたためしなど一度もないのだ。いい加減限界に近づいている眠気に抗いながら、今更だが理不尽な現実だとため息をついて。
 瑞貴は全てに目を閉じることを選んで、意識を手放した。


*さて、瑞貴に待ち受ける運命は
1.灰人さんに発見される(無言攻撃)
2.七瀬さんに見つかる(撮影会Etc...)
3.花が先に起きて叩き起こされる
4.1〜3全部(……)
さあ1〜4のうちどれでしょう♪(酷ェ)被害なしという選択肢は無しです。瑞貴ですから(何)

2007/08/10 初出  【出雲奏司】

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