03.手をつなぐ
言いたいことは分かる。
別に小さいころから手つなぐくらいよくやってたサ。
んでもって、そりゃ年末泣き腫らした顔して登校したりで、学校でもどんな噂になってたかぐらい分かるんだけど。
けどさ!
「だからって、これはどーゆー罰ゲームよ!?」
一緒に登校するのはいつものことだしいいけど、わざわざ見せびらかすようにこんなトコで手をつながなくたっていいんじゃないかと思う。……おかげでさっきからかなり視線が痛い(特に女子からの)
ただでさえ登下校一緒にいるのだってあんまりいい目で見られてないってのに、どーしてくれんだこの外面大王。
ギッと睨みつけるけれど、瑞貴の方は相変わらずのエセ笑顔で、声だけやたらおどろおどろしく低く答えてくれる。
「テメーのせいでケンカしてるなんてうわさが流れてんだ。うわさ帳消しにしたけりゃこれで笑顔でも振りまいてろ」
ブチ。どっかの筋が一本盛大に切れる音がする。
「できるかッ!! あんたじゃあるまいしエセ笑顔なんか垂れ流せるかっつーの! 大体もともとはあんたのせいでしょーが!」
そうだ。(顔を泣き腫らして学校行っちゃったりしたのはさておき)登下校でことごとく一緒にならないどころか、顔合わせないように立ち回ってたのはそもそもコイツだ。
「つーかほとんどアンタのせーじゃん!! なんでアタシばっか恨まれるような目になることしなきゃなんないのよーッ」
「ハイハイ」
「聞けーッ!!」
憎たらしいほどの外面笑顔であしらう瑞貴に、事情が事情なだけにこちらとしても結局は手を振り払うことも出来ないわけで。出来ることといったら目一ぱい文句を言うぐらいっつー……
「二度とやるもんか……!」
ケンカの噂も、こんなとこで手つなぐのも。ガックリあたしは肩を落とした。
ちなみに。
その後、瑞貴のみごとな(エセ)笑顔と、周囲に聞かれないギリギリの音量で怒鳴りつけるがゆえに距離が近く、手をつないで寄り添う花の姿に「破局カウントダウン」の噂が霧の如く立ち消えてしまったのはいうまでもない。
*初期。最初の年末年始でけんかしてたアレの後日談みたいな(妄想)そら雫もキレるわ(違)
2007/07/23 初出 【出雲奏司】